起源がはっきりとはしていませんが、紀元前には既にガラス加工の技術はあり、古代ローマ時代にはガラス器に現代のカットの原型と思える技法が認められる。

それらがササン朝ペルシアへ伝わり、ガラス装飾の主となる技法となり、やがて正倉院に収められているカットグラス「白琉璃碗」として日本に伝わるも、日本においては陶磁器製造の方が盛んで、ガラス工芸に関しては江戸時代に入るまでほぼ進展する事は無かった。

奈良・平安時代から室町時代中頃までの間は、書物にはガラス（製の物）の使用が認められるものの、その時代からの出土品が極めて無く、ガラス工芸の空白の年代となっている。16世紀後半、ヨーロッパとの交流が盛んとなるとガラス工芸に再び注目が集まり、17世紀にはいるとオランダから持ち込まれるガラス製品を当時の人々は「ビードロ」や「ぎやまん」と呼んで珍重した。この時、同時にガラス製品の製造方法・細工技法も持ち込まれたと言われ、後に『江戸切子』『薩摩切子』など日本を代表するガラス工芸品に影響を与えた。

江戸期後期の天保５年（1834）、加賀屋久兵衛なる江戸大伝馬町のびぃどろ屋が、ヨーロッパ製のカットグラスの真似をしてガラス表面に切子細工を施した事が「江戸切子」の始まりとされています。

当時多く用いられた魚子（ななこ）模様は江戸切子の典型となる模様であり、またその当時のヨーロッパのとカットグラスの典型的な模様でもありました。代表的な紋様として『魚子』の他に『矢来・麻の葉・七宝・菊花・格子・籠目・亀甲』等があり、それらを様々に組み合わせる事で多種多様なガラス模様織りなすこととなります。

明治期に入り、政府の殖産興業政策の一環として品川硝子製造所（1876）が建造され、ヨーロッパの新しい技法を導入すると共に江戸切子の細工技法は伝習生に伝えられていった。

現代では、ソーダガラス・クリスタルガラスの素材その物の透明なものと薄く色を被せたものがある。工房の多くは、錦糸町・亀戸周辺をはじめ、墨田区・江東区・江戸川区など東東京に集中している。

薩摩藩では、1846年島津家27代島津斉興の代に、化学薬品の計量や保管を目的としてガラス製造を始めました。

1851年に28代島津斉彬が藩主になると、着色ガラスの研究・開発が行われ、中でも日本で始めて発色に成功した"紅"は『薩摩の紅ガラス』として賞賛されました。

1855年、藩の近代化事業として鹿児島磯地区に"集成館"という工場群が竣工され、薩摩切子の製造も本格的に始まりました。

特に"ぼかし"と呼ばれる日本的な色彩表現は世界に類がなく、その独特な意匠は世界のガラス工芸史上に燦然と輝いています。

しかし、島津斉彬の死（1858）や薩英戦争（1863）、幕末の動乱によって明治初期には製造が途絶えたといわれています。

幻となった薩摩切子ですが、1985年に島津家の人々の手により薩摩切子の復元が行われ、現在では鹿児島県の伝統的工芸品に認定されています。